最近はM&Aなどの報道がよく行われています。そこで気になるのが、ファンドと取締役会の攻防です。
前回の私の投稿に当てはめると、ファンドは株主、取締役は経営陣となります。そもそも両者の利害が相反する場合があるのは当然だとしても、私はこの攻防に対して何となく違和感を覚えています。
一部のファンド株主は、短期的な収益を求めているようなものが多く、表面上は企業価値向上のためと美辞麗句を並びたてていますが、本当に企業価値向上のために行動しているのか、信用できません。短期間で株を大量に取得して、会社へ大幅な増配を要求したり、グリーンメーラーのように株の買取を要求したり、短期的な利益の追求へ血道をあげています。言葉では、そうではないと言っていても行動を見れば、どう見ても説明が出来ないことを平気で行っているものもあります。
一方、一部の経営陣は、株主から委任されて経営陣になったというよりも従業員から出世して、取締役や社長になっているため従業員意識が抜けず、会社の経営者としての意識が希薄なように思います。
そのような株主や経営陣が、企業価値の向上や適切な事業計画の作成といった建前上のツールを使って、自分たちの利益や立場を守るために、他の大切な関係者の事などお構いなしに攻防を繰り返しているようにしか見えません。
もちろん全てのファンドが企業価値向上を目指していないわけではないですし、経営陣にも立派な方はたくさんいらっしゃると思っています。
この構造の背景としては、それぞれの収益構造が根本的に違うということも原因の一つではないかと思います。ファンドの報酬は、業績連動性になっていることが多く、管理報酬と成功報酬があり、成功報酬は過去の計算日の最高水準を更新した分に対して20%というものだそうです。
管理報酬から固定費を賄う事を考えると、ファンドマネージャにとって毎年利益が出ているとすれば、利益の20%が自分たちの収入になるのです。
一方、経営陣にとっては報酬の名称が給与から役員報酬になったぐらいで、金額もそんなに大きく増えるというわけではありません。賞与も完全に業績に連動しているわけではなく過去から大体決められた金額をもらうだけです。しかも、報酬の増額に比べて責任は圧倒的に重くなります。
結局、ファンドの短期的な収益を優先させるような報酬体系と、経営陣の従業員と変わらないような報酬体系をそれぞれの責任や役割に適した体系に変更しなければ、両者の適切な信頼関係は生まれないでしょう。
そして、本当に大切な事は株主や経営陣だけの利益を追求するのではなく、従業員、取引先、地域や国などの関係者全員が喜べる状況にする事だと思います。
例えば、シンプレクス・テクノロジーのように役員の業績連動賞与を明文化して開示し、経営陣に対してその功績や責任にたいして、ふさわしい報酬を与えるということは一つの方向性ではないでしょうか。
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